最近注目を集めているモンテッソーリ教育。モンテッソーリ教育ってよく耳にするけど、実はよくわかっていないという方へ。モンテッソーリ教育の日本における第一人者が約15年前に書いた育児書のロングセラーと言われている”モンテッソーリ教育は子を育てる、親を育てる お母さんの「敏感期」“の内容を簡単にご紹介します!
モンテッソーリ教育とは
モンテッソーリ教育の目的を簡単にお伝えすると「自立していて、有能で、責任感と他人への思いやりがあり、生涯学び続ける姿勢を持った人間を育てる」こと。すごく当たり前のことのように聞こえますが、これが実は深くて、難しいことなんですよね。
マリア・モンテッソーリ
モンテッソーリ教育は、イタリア初の女性医学博士となったマリア・モンテッソーリ(1870年生まれ)によって確立されました。当時はまだ女性が医者になることに否定的だったため、モンテッソーリは精神病院の知的障害のある貧困層の子供たち向けの保育施設でなんとか職を得ることができたそうです。そこでは知的障害のある子供たちは鉄格子の中の劣悪な環境で監禁されていて、誰からも人間らしい扱いを受けていなかったが、モンテッソーリはそんな子供達が床に落ちたパンくずを真剣な眼差しで拾い集め、並べる姿を見て、彼らも感覚的な刺激を求めていることに気づいたそうです。そこから感覚的な刺激が得られる玩具を与えたりしながら治療したところ、知的障害のある子供たちにも知能の著しい発達が見られたため、モンテッソーリは障害児だけでなく健常児含む子供たちの教育法としてモンテッソーリ教育法を確立していったということらしいです。
ちなみに、ユーロ移行前のイタリアの紙幣である旧1000リラにモンテッソーリは描かれていたそうで、イタリアでは知らない人はいない偉人ですね。日本だと野口英世くらいの知名度!?
幼少期にモンテッソーリ教育を受けた著名人
最近、日本では将棋の藤井聡太騎士が幼少期にモンテッソーリ教育を受けていたと話題になりましたが、実は欧米では割とメジャーな幼児教育法らしく、誰もが知る超有名企業の創業者たちや、あのバラク・オバマ元大統領も幼少期にモンテッソーリ教育を受けていたらしいです。それを聞くと、俄然モンテッソーリ教育に興味が湧いてきますね。
- 藤井聡太(将棋棋士)
- ラリー・ペイジ(Google共同創業者)
- セルゲイ・ブリン(Google共同創業者)
- ジェフ・ベゾス(Amazon創業者)
- マーク・ザッカバーグ(Facebook創業者)
- ビル・ゲイツ(Microsoft創業者)
- バラク・オバマ(第44代アメリカ大統領)
敏感期とは
モンテッソーリ教育において重要なキーワードがあります。それはこの本のタイトルにもなっている敏感期。敏感期とは、
幼少期に自分の将来に必要なことのために、あることへの感受性が非常に敏感になり、それを環境の中に見つけ出し、強烈に関わっていく特別の短い期間がある。そのことを獲得すると、その感受性は鈍感になり、また次のものへの感受性が高まる
お母さんの「敏感期」
少し抽象的でわかりずらいかもですが、ここから主な敏感期の特徴を紹介しますね。
子供のあの行動や発言は敏感期だったのか!と納得できるはずです。
主な敏感期
主な敏感期として、「秩序感」「感覚」「運動」の3つがあるとのこと。
秩序感の敏感期
まず、秩序感の敏感期には以下のような特徴が見られるそうです。
- 生後数カ月後から2,3歳ごろをピークとし、6歳ごろにはほとんど消える
- 「順番・場所・所有物・習慣」などに非常にこだわる
- いつも決まった<順番>でないと気がすまない
- いつもと同じ<場所>でないと嫌だ
- 「これは私のもの!」「これはパパの/ママの!」と<所有物>が入れ替わると怒る
- 「いつもやってるようにして!」といつもと異なるやり方をすると怒り出す
例えば、毎日決まった道を通らないと気が済まない子や、毎朝自分のうんちをチェックしないと気が済まない子、寝るときに決まった位置にぬいぐるみを配置しないと気が済まない子などいますが、それは秩序感の敏感期なんですね。だから、子どものワガママでも何でもないんです。秩序に敏感になっていて、その中で世の中の秩序をちゃんと身に付けようとしている証拠なんですね。
うちの子全部当てはまると思った方も多いのではないでしょうか?
他にも、モンテッソーリの”幼児の秘密”という著書にも面白い記述があるので紹介します。
大人は、自分の手近に暮らしている小さい人の心の中の深い秘密をあまり知らなすぎます。子どもというものは、大人にわからない心の要求を満足させながら生活したがる者・・・
「幼児の秘密」 モンテッソーリ著
(中略)
幼児たちは特色ある整頓好きの傾向を見せます。一歳半から二歳までで、彼らはたとえ漠然とした形にしろ、既に身辺への秩序への欲求をはっきり現します。幼児は乱雑の中で生活しえないのです。乱雑は苦痛を引き起こし、やけに泣くか、時には本当の病気の症状を呈し、継続的興奮状態になって現れます。幼児は、大人や大きい子どもが気に留めない秩序の狂いにすぐ気づきます。
“大人は、自分の手近に暮らしている小さい人の心の中の深い秘密をあまり知らなすぎます”の一節にはハッとさせられますね。
感覚の敏感期
次に、感覚の敏感期には以下のような特徴が見られるそうです。
- 五感(視覚・聴覚・嗅覚・味覚・触覚)について特別に敏感な感受性が生まれる
- 五感が完成し洗練されるのは3歳から6歳ごろ
- 例えば、
- 見る:一匹の虫を何時間でも観察する
- 聴く:自分の声のわずかな違いを聞き分けようとする
- 嗅ぐ:ボロボロのぬいぐるみのにおいが大好き
- 味わう:わずかな味の違いに敏感になる。家庭の味を覚える
- 触れる:洋服やタオルのタグをひたすら触る
これも全て思い当たる節がありますね。なぜ一つのモノにあれほどまでに固執するのか謎が解けました。
運動の敏感期
最後に、運動の敏感期には以下のような特徴が見られるそうです
- ありとあらゆる<動き方>を身に付けようとする
- そのために「どう動けばよいか」に強い関心を持ち、人の動きを真剣に見ている
- <動き方>を身に付けるために精一杯努力する
よく子供が親や周りの子供の動きを観察してマネをするのは、動き方を身に付けるための精一杯の努力なんですね。ちなみに、人間が人生において100%の力を出し切るまで身体を動かせるのはこの時期だけらしいです。なぜなら、動き方を覚えた人間はできるだけ省エネで効率的に動こうとするから。毎日、ぎこちない動きでたまに転んだりしながら、一生懸命カラダを動かす子供がより一層愛おしく思えてきました。
動きの大まかな区分
動きといっても大きく以下4つの区分があり、まずは走ったり、飛び跳ねたりと大きな動きから、それができるようになれば、最終的に指先を使う細かい動きの訓練をするのが良いとのことです。
- 大きな動き:走る、跳ねる
- バランスとる:重いものを持つ、線の上を歩く
- 手腕を使う:投げる、叩く
- 指先を使う:つかむ、ひねる、たたむ、まわす
子供が重いものを持ちだがるのは、ワガママではなく、バランスをとる動きを練習しようとしているからなんですね。さすがに、テレビの画面を何度も叩かれると止めさせますが、手腕を使う練習をしているんだな!と思えるだけで、親の精神状態が変わってきますね。指先を使う動作は微細な動きなので、なんども繰り返し練習することで、その強さや精度が変わってくるそうです。走ったりすることに比べてあまり重要でないと思われるかもしれませんが、これができないと、例えば筆圧が弱くてしっかりとした字が書けないようになってしまうケースもあるようです。(字を書くとは、ペンをしっかりと握って、ペン先を紙に一定の力で押し付けながら、細かく動かし続ける動作なので)
子どもができるようになる教え方(=提示)
モンテッソーリ教育では、”提示”と呼ぶらしいのですが、子供が自主的にできるようになる教え方にも順番と工夫が必要とのことです。
- 対象を1つだけ取り出す
- 動作を分析し、順序立てる
- 難しいところをハッキリさせる
- 動作を見せる間は言葉を使わない
- 正確に実行し、精密なところに心をこめる
- 教えながら、教える
- 自分からする自由を与える
雑巾がけは複雑で高度な運動の組み合わせ
例えば、大人に「雑巾がけして!」と伝えれば誰でもできてしまうのですが、実はこの雑巾がけ1つにしても複雑で高度な運動の組み合わせなのです。
まず、雑巾を絞るためには、雑巾を広げ、水につけ、それを持ち上げ、左手の中に入れ、右手を添え、強く絞る、という動作が必要です。その後、床を拭くためには、両手で抑えて、お尻を持ち上げて、腕に力を入れて、足を交互に蹴りだし、バランスを取りながら、目的地まで続ける、という動作が必要です。
実は他にも、静かに歩くことや、鼻をかむことは複雑で高度な動作の組み合わせでできており、やったことのない子どもにやってみて!と言ってもできないのが普通です。なので、前述したとおり、動作を分解して丁寧に何度も繰り返し提示してあげることが大事なんですね。
成長の機会は日常生活の中に
モンテッソーリ教育って何か特別なんでしょ?それなりのお金ださないと受けられないんじゃない?と思っていた方もいるかもしれませんが、そんなことはありません!むしろ、日常生活の中にこそ子供の成長の機会はたくさんあり、毎日を大切にすることが大事だそです。
例えば、普段の家事を子供に手伝ってもらうだけで、人間に必要なさまざまな動作の訓練ができるそうです。
- 掃除(掃く、拭く、絞る、叩く)
- 洗濯(取り出す、干す、つまむ、畳む、片付ける)
- 料理(洗う、剝く、切る)
- 御膳立て(運ぶ、並べる、整える)
知性と自発性
最後に、人間の知性と自発性はもともと人間に備わっているもので、論理数学的な法則性によって自然と発達していくとモンテッソーリは言っています。ここでいう知性とは、まず「分ける」。分けたものを「比べる」「合わせる」などする。別の言葉で言えば「分析」「集合」「比較」「対応」です。
数列や色彩を教えたことのない子どもたちが、勝手におもちゃや石ころを綺麗に並べ替えていたり、色ごとにまとめていたりするのはこのためです。自然に発達していく知性ですが、これをさらに伸ばしていくのがモンテッソーリ教育というわけです。さらに、モンテッソーリ教育では、子供の知性を伸ばしていくための知育玩具も積極的に活用します。
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まとめ
冒頭にお伝えしたように、モンテッソーリ教育は「自立していて、有能で、責任感と他人への思いやりがあり、生涯学び続ける姿勢を持った人間を育てる」ことを目的としています。そのために、子供の敏感期を大切にし、提示を繰り返しながら、知育玩具も活用しつつ、日常の生活や動作の中で子供の知性を最大限育んでいく教育法といえるでしょう。
いかがだったでしょうか?少しモンテッソーリ教育についての理解が深まったのではないでしょうか?とはいえ、モンテッソーリ教育も幼児教育も奥が深く、まだまだ知らないことだらけなので、これからも少しずつ勉強していきたいと思います。普段は子育てという実践の日常で、もちろんそこから学ぶことは大きいのですが、たまには子育てや教育法の本を読んで、客観的な知識を身に着けるもの良いですね。
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