言葉って大事。赤ちゃんの脳を作る「3000万語の格差」を読んでみた!

教育

たまたまTwitterで見かけて気になっていた「3000万語の格差 〜赤ちゃんの脳をつくる、親と保育者の話しかけ〜」を読んでみました!脳の物理的な成長がほぼ終わる3歳頃までの言葉の重要性について書かれた本なのですが、子どもがしゃべり始めたタイミングで知ることができて良かったです。その内容について簡単にお伝えします!


著者について

著者はシカゴ大学小児外科のダナ・サスキンド教授です。外科医として人工内耳の移植手術に携わる中で、手術に成功して音が聴こえるようになっても、言葉が話せるようになる子とならない子がいる、その原因を究明するうちにハートとリズリーという社会科学者が行った家庭環境が言語に与える研究に辿り着きました。

「3000万語の格差」研究

この研究では、異なる社会経済レベルに属する家族の子どもを、生後約9ヶ月から3歳まで追跡観察しました。社会経済的なレベルは、家族の職業、母親の教育年数、両親の最終学歴、世帯年収で決められ、「社会経済レベルが高いグループ」「中度グループ」「低いグループ」「生活保護グループ」に属する複数の家族を対象としました。

この研究から分かったことは、親が話しかける言葉が多いほど、ほぼ例外なく子供の語彙は速く増え、3歳児とその後のIQテストの点数も高かったこと。同時に、命令や禁止の言葉が言葉を習得する子供の能力を抑えていることもわかったのです。発達の足を大きく引っ張っていたのは、親の「駄目、ストップ、それやめなさい」でした。これ以外にも2つ、言葉の習得とIQに影響を及ぼす要因がありました。1つは、子供が聞いている語彙の豊かさ。もう1つは家族の会話習慣でした。親同士があまり話さない家庭では、子どももあまり話さないということがわかりました。

ちなみに、この本のタイトルでもある3000万語というのは、3000万種の異なる言葉のことではありません。同じ言葉が繰り返し使われていることを前提とした、話されている言葉の総数です。

脳の可塑性

なぜ3歳の終わり頃までの言葉が大事なのか。それは脳の仕組みに理由があります。1000億のニューロン神経細胞を含む人間の脳の物理的な成長は3歳の終わり頃までに約85%が終わります。つまり、出生から3歳までの間、1秒ごとに700から1000の新たな神経細胞の繋がりができています。脳がこれほどの可塑性を持ち、異なる環境に合わせて変わっていく柔軟性を持つ時期は二度とないからです。この時期の脳の成長が、記憶や感情、行動、運動能力などにも影響を与え、この後の長い人生の礎となっていくのです。

3つのT

ではどのようにしたら良いか?この疑問の答えとして、3つのTを意識し、実践することが大切だそうです。3つのTは脳を育てるために不可欠な豊かな言語環境の基礎となるものです。

  • Tune In
  • Talk More
  • Take Turns

Tune In 〜注意とからだを子どもに向けて〜

最初のTune Inは、子どもが集中していることに親も一緒に集中することです。次の2つのうちどちらがTune Inでしょうか?

  • 子どもは1人で積み木で遊んでいます。親が子どもが大好きな絵本を読んであげようと「こっちへおいで」と言います。
  • 子どもは1人で積み木で遊んでいます。子どもがしている積み木に興味を持ち、親も一緒に積み木で遊び始めます。

答えは後者です。なぜこれが大切なのか?特に子どもは、自分が興味がないものに注意を向ける時に脳のエネルギーを使います(大人も急に違うことをやってと言われたら集中力が切れますよね)。また、子どもは興味がないことに参加している時、そこで使われている言葉を学ばない傾向にあることも研究から分かっているそうです。つまり、子供が自分で興味を持って集中している世界に親が入り込むことが大切なのです。また、親が物理的に子どもと同じ目線になることでより一層効果が上がるそうです。

赤ちゃん言葉

とある研究では、赤ちゃん言葉をより多く聞いた子どもは、大人向けの言葉をより多く聴いていた子どもに比べ、2歳の段階で2倍の言葉を知っていたそうです。赤ちゃん言葉、つまり子ども向けの話し方は、内容の質を下げているわけではなく、子どもと向き合い、子どもが聞き取りやすい言葉で、子どもが集中しやすい言葉で話しているということなので、Tune Inの観点からも良いそうです。

アタッチメント理論

アタッチメント理論といって、多くの研究で支持されていることらしいのですが、赤ちゃんが泣いたままの状態で放って置かれると有害なストレスを感じ、ひいては脳に永久的なマイナスな影響を与え、感情や行動のコントロール、他者に対する信頼まで難しくなるそうです。こういった子どもたちは、肥満や糖尿病、心血管疾患、自己免疫疾患などにも罹りやすくなるという研究結果もあるそうです。一方で、親がTune Inし続けた場合は、全く正反対な結果となることからもTune Inは大事な要素の1つと言えます。

Talk More 〜子どもとたくさん話す〜

2つ目のTalk Moreは、子どもと話す親の言葉を増やすことです。特に子どもが今、集中しているものやことに関する言葉です。親が子どもに向かって言う言葉を増やすことではありません。「子どもと」であって、「子どもに」ではないため、子どもと親の双方向の関わりが求められます。Talk Moreの方法として、以下のことを意識、実践すると良いそうです。

ナレーションをする

日常の親自身の行動を映画のナレーションのように言葉にすることで、語彙を増やし、言葉の関係性を伝えることができます。

並行トーク

ナレーションは親が自分がしていることを話しますが、並行トークは子どもがしていることを実況中継するイメージです。

「こそあど」を除く

無意識に使いがちな「これ、あれ、それ、どれ」などの代名詞をなるべく使わないことが大事です。大人にとっては空気のようにあまり気にしない代名詞ですが、具体的なものやことで伝えることで、子どもにとっては貴重な学びの機会になります。

状況から切り離された(ここ、いま意外)の話をする

子どもは「パパ」「ママ」「ワンワン」など目の前に見えているものから話し始めます。これは正常な成長プロセスですが、さらに子どもの知的な発達を促すためには、状況から切り離された言葉を使う練習をするのが良いそうです。例えば、最近一緒に遊んだおもちゃの話や、子どもが知っている誰か別の人の話など。そうすることで、子どもは目の前にあるものの助けを借りずに、自分が持っている語彙を使って、考え、説明しないといけないからです。このスキルは今後の学校での学習を大きく後押ししてくれます。

ふくらませ、伸ばし、足場をつくる

子どもが言っていることを穴埋めしてふくらませたり、子どもが知っている単語に、積み木のように動詞や形容詞を加えて会話するすることで、こどもが持っている言葉の力を使って成長を促すことができます。

  • 「だっこ、だっこ」→「パパに抱っこして欲しいの?」
  • 「ワンワン、かなしい」→「犬が悲しんでいるんね。なんでだろう?」
  • 「ねんね」→「眠いんだね。もう遅いし、疲れてるからお布団に入ろうね」
  • 「このアイス、美味しい!」→「この苺アイスはとても美味しいね。だけど、すごく冷たいね!」

Take Turns 〜子どもと交互に対話する〜

子どもを対話のやりとりの中に引き込んでいく方法です。子どもが反応するまで「待つ」ことが大切です。特に話し始めたばかりの子どもは、言葉を見つけるまでに時間がかかるため、親が言葉を先取りしてしまいがちですが、これでは会話がそこで終わってしまいます。

また、よくやってしまいがちですが、「これは何?」という質問や「はい」「いいえ」で答えられる質問は、こどもが既に知っている単語を思い出すよう促しているだけなので会話がすぐに終わってしまいます。一方、答えが決まっていない質問、「なぜ?」や「どうやって?」などのオープンクエスチョンの方が、会話が続き、思考や問題解決のプロセスが促されるため良いそうです。

3つのTの実践

3つのTは子どもの語彙を育てるだけでなく、日常の様々なシーンで活用できます。そのいくつかをご紹介します。

子どもと一緒に本を読む

親が最初から最後まで読み聞かせるのではなく、何が子どもの注意を急に引くか、親は敏感に観察します。そして、子どもの注意が変わる向きに従って大人の注意の向きも変えていきます【Tune In】。また、単に本に書かれていることを読み上げるのではなく、物語の中で何が起きているのか、これからどうなっていくのか、出来事が登場人物にどんな影響を与えるのかについて、できるだけ沢山話します【Talk More】。さらに、物語に関連して子どもの頭に浮かんだ出来事や考え、感じたことなどをオープンクエスチョンで聴くことで、子どもがより一層考えたり、「もし〜だったら」と推測し、抽象的な思考をするのを促します【Take Turns】

算数(数字・形・空間・パターンなど)と3つのT

子どもが小さい時期に算数の基礎づくりをする上で大切なのは、数を操作したり、形に触れたり、空間的推論やものを測ったりすることです。これらは人間に本来備わっている知性であり、意識せずとも学んでいくそうですが、3つのTを活用することで、学ぶのが楽になったり、より一層学びが促進されるようです。本書で紹介されていた会話例をいくつか紹介します。

Tune In:朝、子どもが服を着ようとしている様子に目をとめる。

Talk More:「あなたのロンパースにはスナップが5つ付いているね。パパ/ママが教えるのを手伝ってくれる?1、2、3、4、5。5つのスナップをとめて、はい、準備完了。

Take Turns:子どもがスナップをとめならが、パパ/ママと一緒に数える。1、2、3…

Tune In:子どもは浴槽の中の泡が大好きです。

Talk More:「泡が大きい白いブランケットみたいだね。腕を見てごらん、泡の線がついてるよ。まっすぐな線。ほら、ここに小さな丸い泡の島があるよ。周りは水だね。泡の島、あなたの手の近くにあるよ。でも、つま先からは遠いなあ。ほら、水に丸を描いてみて。四角は作れる?難しいね。じゃあ、高いお山は?」

Take Turns:「手が泡だらけで泡がたくさん。泡はどんな形?そう、当たり!泡は丸!ほら、せっけんが泡の中に浮いているよ。せっけんはどんな形?長方形だね。あなたのタオルは正方形。タオルにせっけんをつけようね。正方形の中に長方形だね。」

Tune In:パパの靴を履いて、子どもがリビングを歩き回っています。

Talk More:「パパの靴を履いているの?大きいに決まってるね!パパの足は大きいから、大きい靴じゃなきゃダメなんだよ。パパの足と〇〇(子どもの名前)足を比べてごらん。〇〇の足はとっても小さいでしょ。」

Take Turns:「誰の靴が大きい?パパの?それとも〇〇の?正解!パパの靴の方が〇〇の靴よりずっと大きいね。でも〇〇の足も大きくなってきているんだよ。だから、先週新しい靴を買ったんだね。古い靴はもう小さすぎて、きつかったね。」

命令や指示は脳を育てない

最後に、脳を育てる効果が1番低い方法をお伝えします。それは、命令と短い指示です。なぜなら、これらは言葉による反応を全く必要としないからです。命令形の代わりに大切なのは、必ずその理由を説明することです。納得のできる理由とセットで説明することで、子どもは因果関係を学びます。これはクリティカル・シンキングなどさらに高度な学びの基礎となる大事な思考です。

いかがだったでしょうか?今回は実践的な内容のみ簡単にピックアップしてみましたが、この本には他にも様々な興味深い研究結果や実践的なTipsが書かれているため、詳細について興味ある方はぜひ原著にあたってみてください!


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